お坊さんが薦めてくれました。
★★★★★
日曜座禅会の法話で、歩き遍路を30回以上されている住職から、この本の一節を教えられ、おもしろそうだったので読んでみました。
落語の枕のように本筋とは直接関係ない小話にはじまり、いつの間にか「マムシの効能」「菅笠は屋根である」「野宿の作法」「ありがたき不親切」[宿ことごとく五つ星」など、40話すべてがお遍路の旅の真相にいたるよう工夫されています。
サブタイトルの「美人をたずねて三百里」は男性読者への誘い水なのでしょう。一般の美人と四国での美人の違いが分かる巧みなオチ。
80歳のお遍路さんが指名手配だったとの報道に対し、「罪浅きも深きも罪なきも、その時々の行いを煎じ詰めれば、病院・火葬場・警察・税務署のどれかに向かって歩いている」。人生全般を考えさせる哲学的な言葉にも、さりげないユーモアを感じます。
そのほか占いや霊能ブーム、マンション、ダイエット流行り、ボランティアやNPO法人などへの社会時評が随所に織りまぜられ、退屈することがありませんでした。
お遍路の1人旅に「何を持って行くべきか」に答えて、最後に著者は、目に映る草花木々鳥虫たちの名前と3番まで唄える歌を挙げ、ガイドブックについては御自身の本もふくめ「持っていけ」ではなく、「荷物になるから置いていけ」と、歩き遍路の旅の本質を潔く説いています。
普通の旅行しか知らない私には、驚きに満ち感心することばかりでしたが、おかげさまで歩き遍路に行く楽しみと勇気がわいてきました。定年退職をひかえ、この本と出会えたことに心から感謝しています。