ラスト2作は一般的に観て実験的だけど、全作品優れたドラマに酔える一冊。心情描写と物語の奥行きでエロが際だっている逸品。
★★★★★
著者の3冊目。
潜在型感染性不妊症の流行により新生児の激減にみまわれた、そんな時代を健気に生きる少女たちのエロ心とトキメキで綴った物語『奥さまシリーズ』は、『奥さまは少女』『奥さまはブルマ』『メガネの奥さまもブルマ』『奥さまのヒミツ』『奥さまはパーティー』の全5話。
愛を探すために調教師の血族を棄てた男に涌いて溢れた娘たち。激エロドラマ『エロをとり戻せ』。
お忍びでやって来たオタク王女と側近のオチャメなラブエロ『アキバの休日』。
後天性性転換症の男女のお話『男の子←→女の子』。
性的嗜好の不一致で別れた夫婦によるそれぞれの愛の形『お父さん調教中』。
事故が産んだ精神の病に身動きすることを拒否しつつも大人になることを望む少女の破滅へのカウントダウン『足音』。この作品だけは相当にハードな鬱系です。
絵本形式に近い大人の童話『魔女の呪い』。
ラスト2作は一般的にみて実験的過ぎるかもしれないけど、いかなる作家であっても枠にははまって欲しくないと常日頃から思ってる私にとっては歓迎したい内容でした。
『奥さま』シリーズの分厚さが圧巻だけど、他の短編だって負けないくらいパワーに満ち溢れてます。
ドラマとエロのバランスも良く、キャラの表情や心理描写の奥行きも抜群です。
物語派の方と心情描写派の方へは特にお薦めの一冊。