数学の贈り物
★★★★☆
純粋数学から応用数学、数理物理学にわたる20人の各分野の専門家が、それぞれ美しいと思った定理や理論について書いた数学エッセイ集である。複雑な数式も高度な概念も遠慮なく使われているので、全部を理解するのはかなり大変かもしれないが、数学好きの人が退屈しのぎに読むのには手ごろな本である。
何をもって美しいと感じるかは、人それぞれ千差万別である。自分が慣れ親しんでいる分野の話だと、著者が美しいと感じた理由がある程度推量できるが、そうでない分野の話は、なんでこんなゴタゴタしたことを美しいと感じるのだろうと思う。読者は自分自身で、どの定理を最も美しいと思うか考えてみるとよいだろう。私なら、解析接続の一意性を選びたい。
「美しさ」という視点で語られる数学
★★★★☆
20人の数学者が,それぞれに定理を選び,その美しさを語る本.最後に「学生(文系!)が選んだ美しい定理」のおまけつき.
扱われている定理は,中学生でも分かる「初等幾何の定理」から,数学を専攻する学生でも難しいと思われるものまで幅広い.難しいものは難しいなりに,それを書いた数学者の感じる美しさの雰囲気は伝わってきて楽しい.
数学者が,自分の感じる「美しさ」をどう言葉で表現しているかは興味深かった.数学的事実を淡々と語ることで美しさを浮き彫りにしているものもあれば,「金庫破りのような感覚」とか,「農家や漁師や職人の使いこまれた傷だらけの手に宿る美しさ」とか,素敵な表現もある.個人的なお気に入りは「このような美しい理論を作りだしたガロワは美少年に違いないと筆者は思っている」というところ.
自分の勉強している理論や定理のどこがどう「美しい」か,という視点で,数学を見直してみたい,と思わされた.