非常に良く書かれている良書。買い。
★★★★★
NMR(核磁気共鳴)およびESR(電子スピン共鳴)に関する非常に良く書かれた教科書である。私はNMR屋なので、ESRのパートは何語で書かれていても全く意味不明なのだが、NMRの教科書としてNMRのパートのみでも、買い、と思われる。
NMRの初学者には少々胃もたれする内容かもしれないが、NMRを志すものにとって重要なことが実に丁寧に書かれている。また、熟練者は本書を読むことを通じ、自分の知識を整理や再確認をしたりすると良いだろう。本書はクラリッジの教科書と併せて読むと良いかもしれない。ハードウエアに関しては、分量として若干不満はあるものの、日本語で書かれた文献としては、現時点私の知る限り恐らく最も詳しく書かれている本のひとつと思われる。
惜しむらくは、本書は実験化学講座の1冊であり、日本のNMRおよびESR研究者の総力を結集しての労作であるがゆえ、どちらかと言えば文体や表現、対象の選択が悪く言えば無難、ありきたりであり、そのあたり、本書は、NMRに対する愛情が紙面からほとばしる荒田先生の「NMRの書」とは明らかにスタンスが異なる。しかし、そういったことを差し引いても、本書は日本のNMR業界、ひいては日本の化学界全体に非常に大きな貢献をしたと思われる。日本のNMRユーザは本書を日本語で読むことができることを喜びに感じることになろう。
☆5、大学院修士以上(NMR触りはじめて2年目以降)の方、向け。