深淵なるケモノガリ!
★★★★★
一年ぶりの第二巻は、予想の斜め上を行く見事な出来。唯一、殺人の才能だけに秀でた平凡な高校生……今回はそんな主人公の少年が独裁者国家元首に挑み、圧政を強いられていた国民たちに革命の英雄としてまつりあげられることに。東出流圧倒的B級パワーの破天荒な展開で最後まで一気に読ませる。そして読み終えたあと「殺人」と「国家」と「世界のいままでの歴史というもの」について、改めて考えさせられた。「歴史とは、虐殺者がその犠牲者や自分たち自身のことに関して作り上げた供述を編纂したものにほかならない」「歴史とは、下劣さと残酷さとが織りなした一枚の布であって、そのところどころにわずかの純粋さが輝いているといったほどのものなのだ」これは思想家ヴェーユの言葉だが、ひょっとしたら作者の東出氏は、「ケモノガリ」シリーズにそういった思想をも重ね合わせているのかもしれない。