システムやルールは作っても、それを実行する人が変わらなければ何も結果は変わらない、という意味だ。コンサルタント導入において、時にこの言葉のような現象が起きる。
この「OJTでいこう!」は仏の作り方というよりも、魂の入れ方に注目したカイゼン指導書であると言える。
基本的な「分ける」「捨てる」「測る」「決める」「見せる」という5つの作業を通じて、カイゼンの魂の入れ方を示しているのである。一般的なカイゼン指導書にあるような、動作経済の原則や、原価管理などについてはそれほどページを割いていない。しかし、そこが逆に良い。シンプルな言葉な分、「うんうん」と頷いて読める。明日からできそうだ!と思える。
個人的に気に入っているのは、2章から始まる「実例」の章だ。トヨタのカイゼンを、他の企業に導入していく、そのあらましが描かれている。
もちろん、例の中には「ちょっとうまくいきすぎじゃないですか?」という部分もある。それでも、現場の意識が変わっていき、最後は感謝と自信を得て幕が引かれる様子は、やっぱり読んでいてジーンと来るものだ。
1時間あれば読める本なだけに、何度か読んで、次に自分がで実行できるようにしたい。
また、作中に出てくるOJTソリューションズ(株)の構成人員は、トヨタの古参作業者と、リクルートの若手の組み合わせらしい。彼らの様子を見ると、高年齢労働者と、若年労働者の理想の関係 - 「オヤジとムスコ」 - がちょっと見えた気がした。
また、本書で紹介されている5つのアクションのような切り口でトヨタ生産方式をまとめた本は史上初と言っていいのではないかと思う。これは非常に分かりやすく、本質をついていると思う。ここまで具体的に現場からの企業改革、人材育成ドラマに迫った本は過去になかったのではないだろうか?本書で紹介されているオージェイティー・ソリューションズはトヨタとリクルートの合弁会社なのであるが、「よく両社がOKしたな」と思うような、両社が優良、優秀企業たる本質に肉薄しているといえる。
ほとんどが生産現場、製造業での事例ではあるが、それ以外の職場での企業改革、人材育成に生きるヒントが満載の本である。
筆者による後書き的な「おわりに」の章も感動的だ。日本的経営の崩壊が叫ばれたこの10年間であり、そのことも否めないが、日本企業の復活例が注目されつつある今だからこそ本書の主張には企業経営者だけでなく、ミドルまでも耳を傾けるべきであろう。
ユニークなタイトル、表紙に一見戸惑うかもしれないが、是非、手にとっていただきたい。
著者は、「変わること」を成し遂げるために必要なことを上記のように
まとめています。
本書は、上記5つのポイントを実際の企業のケースで説明しています。
現場でどのような問題があり、どう対処していったかを、
OJTトレーナーのエッセンスのようなものと共に
ある種のドキュメンタリーのようなタッチで紹介しています。
読んでみて、
・単純な作業・動作にも、どこまで深い洗練の余地があること
・やはり最後は「人」の力を最大限発揮するのが重要であること
を感じました。
「現場」感を少しでも垣間見たい方にオススメです。