企業再生とは何かをわかりやすく、面白く説明している
★★★★★
企業再生。単純に字面だけ見れば、赤字の「企業」を「再生」させるということでなんとなくわかるが、実は奥が深い。
しかしその奥の部分を、専門家以外はなかなか理解できない。
テレビで報道される企業再生のニュースは、いかにも資本主義然りとしたファンドと、ウェットで情緒的な経営者という構造を垣間見せるようにスポットライトを当てるため、まったくその実態はわからない。
だがこの本は、そんな企業再生の奥の部分をしっかりと、深く説明してくれている。
しかも小説なので、読みやすく、わかりやすい。
あらゆるビジネスマンにお勧めの本。
企業再生の実務がイメージできる
★★★★☆
企業再生の流れが分かる良い本だ。
よく読むと実務上どうステップを踏むかもイメージできる。
反面、物語の構成のために惜しい点が一つ。
企業再生実務では、事業のフロー、財務問題、法的整理の知識など個別テーマが色々あり、物語ではカバーしきれない部分がある(個人的には馴染みのない生産管理がイメージしにくかった)。
アリックスがこれらの分野をすべて書籍を発売してカバーしていくのならば、それを期待したいが、さもなくば各巻末に参考図書を示してくれれば有難い。
終章の「産業再生の視点を持つべし」との主張には強い関心を持った。アリックスの今後の出版を期待する。
これはよく出来ている。ターンアラウンド・スペシャリストの仕事がわかった気になれる。
★★★★★
経営危機に陥った企業を再生させる事業というのは、本当は、こんなに
うまく行くものではないのでしょう。しかし、その一連の流れや主要な事項について
物語形式で進みながら、ひととおりカバーされています。ターンアラウンド・スペシャリスト
の仕事がイメージとして掴める、よくできた本です。
循環取引という、これもまたよくありがちな落とし穴を上手に説明していて、
投資ファンドの登場、コストダウンのやり方、生産体制の見直し、
コールセンターの立て直し、私的整理と民事再生、事業の売却という順に、
形式的でお勉強チックな説明にならずに、かつ、わかりやすく、簡潔に
説明されています。しかも、登場人物が陥りがちな誤りや心理状態も
的確に描かれていて、百戦錬磨の貫禄を見せられたような気がします。
この本は、とても勉強になります。
物語風ならもう少し長い方が・・・
★★★☆☆
ターンアラウンドスペシャリストの何たるか、そして、企業再生に関わる様々な手法(ファンドからの資金調達を含む財務リストラ、コスト削減や生産体制見直しなどの業務リストラ、民事再生といった法的整理、事業売却などのM&A、等)について、基礎的な内容がイメージできるものだと思います。
ただ、本書くらいの分量で基礎的な知識の習得を意図したものであれば、専門書的にまとめた内容でもよかったのかなと思いました。
別の言い方をすれば、物語風にするのであれば、もう少し多めの分量で、それこそもっと臨場感のある(現実味のある?)ストーリーにしていただきたかったというところでしょうか。
読み物にするためとはいえ
★★★☆☆
アリックスはアメリカでは実績ある企業再生ファームですが、
本書は我が国における企業再生への世間的理解を「浅い」と想定してか、
書籍である以上ストーリーとして成立するように意図してか、
本書の舞台として登場する企業の状況が相当に、
再生しやすい設定となっていますね。
例えば、研究開発費で、不急不要なものが1億円もあるなど・・・
そんな打ち出の小づち、普通は残されてませんから。
現実は、本当に絞って擦り切れた雑巾のような状態の企業に乗り込み、
でも、企業の経営陣からは「任せるから早く救ってくれ」と過大に期待され、
従業員からは「こいつらが会社を切り売りする奴らか」と誤解の白い目を向けられます。
業種によっては、地元自治体や監督官庁、地縁や血縁などのしがらみが、
嫌というほど絡み合ったなかで、最初はまともに身動きもとれません。
それでもそこから、蟻の一穴を探し当て、
再建に向け一人、また一人とミドルから行動を引き出し、
スタッフの希望に火をともし、汗と涙を一緒に流しながら、
年を越える時間をかけて、企業を再生してゆくものです。
そういう意味で、もう少し、リアリティある話にしてほしかったですね。