哲学と科学
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"中学生からの"とタイトルにありますが,中学生には内容も使われている言葉も難しいと思いました。"中学生くらいから考えはじめるべき事項"が書かれているのは確かで,中学生を読者として想定しているわけではなく,大人が読んで中学生へ伝える内容と感じました。
内容は重要なことが書かれています。私は哲学と宗教と科学の違いについて興味を持ちました。海外では博士号をPhD(Doctor of Philosophy)と呼びますが,対象としている学問領域に関係なく新たな学問概念の枠組みを作ったという意味で博士号はやはりPh.Dなのだと思いました。
また,再読すると新たな発見のある一冊です。
中学生向けだが大人である私にもとても有用
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早稲田大学国際教養学部教授が書く中学生向けの哲学入門
構成は、まず自分とは何かということで自己紹介を兼ねた
哲学者になった理由、そして哲学への出発点の紹介があります。
そして私には全くわからなかった問題、つまり、哲学と宗教の違い
そして形而上学についての説明を行い哲学の定義を明確にしています。
後半は社会のルールと幸福について哲学的に考えたときの回答が
これまたわかりやすく書いてあります。
いわゆる哲学本を読んで完全に挫折した私としては、とてもとてもとても
うれしい本になります。中学生向けではありますが充分に筋道が
たてられており、ここまでしっかり書かれているとは思いも
しませんでした。
残念ながら私には、この本の内容が正しいかどうか検証できるだけの
智力が備わっていないので、手放しでは推奨できないものの
それでもいままで全くわからなかったことが、これまた適切に
扱われているこの本は私にはとてもありがたかったです。
難しそうな哲学の価値、有用性を分かりやすく教えてくれる本
★★★★☆
哲学は、普通の人にとっては難しくて縁遠いものであり、だからあまり役立たないように思われがちです。しかしこの本は、哲学が生きることの意味と価値を教えてくれる、人々にとっての共通な考え方であり、だからとても役に立つものである、ということを、ギリシャ哲学から現象学に至る諸哲学者達の、更に著者の欲望論の考え方をベースに、丁寧に説明してくれています。だから本書の題名は、中学生から、というよりは、中学生からお年寄りまでの、とした方が良いと思います。
本書は心や社会についての四つのテーマについて書かれていて、それぞれの謎解きも面白いのですが、特に最後に書かれている一文は、今の時代にとても役に立つものだと思いました。それは「自分の意志を持つこと」こそ、現代に生きるわれわれにとって、最も大事なテーマである、というものです。しかし、そこには深い意味が込められています。それは先ず、欲望はわれわれの主人であると同時に育ての親であるが、誰もが求める「一般欲望」と「自分固有の生の目標としての欲望」があること、また、快不快、善悪、美醜に対する自分の内的な基準「自己ルール」があること、そして、それらは人間の本質であること、更に近代社会ではそれ以前の社会に比べて生まれながらの身分などによる職業や結婚の選択が制限されないので「自由は選び取るだけでなく創り出すもの」となってきている、と指摘した上で、「われわれは、欲望や自己ルールに抗して自分の本質を刷新する存在であり、そうすることによってはじめて、自分の生への意志を持つことが出来る」ということだと思います。
哲学初心者向けの大変良い本です!
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中学生と題名にはありますが、哲学はむずかしいから、ちょっとね!?という大人にも、筆者は「哲学は今現在どういう学問であるのか」を大変わかりやすく平易な文章で書いています。
たとえば、「哲学と宗教はどこが違うのか?」や「形而上学」など、とてもむずかしそうな概念の意味もとてもわかりやすく説明されています。これを読んで、ああ、なるほど!と思いました。
そして、現代人は外からの「欲望」に影響を受けながらも、それをいかに「自分自身の意思」でコントロールできるかが重要であるかを筆者は強調しています。ここでは哲学というすばらしい学問を、みんなにぜひ知ってもらいたい!という筆者の強い思いを感じました。
哲学に限らず、21世紀のこれからは、各自がどのようにして生きたらいいのかが、模索し悩める時代に入っています。そんな時に本書を読んでみることも一助になるのではないでしょうか。
中学生、高校生、大学生から大人まで、哲学初心者向けの大変良い本です!哲学に興味のある方はぜひ読んでみてください。
若い時から自分の意志を持ち、自分で考える大切さ
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「中学生から」の修飾語がなければ、手に取らない人があるかもしれない。
若い人にも分かり易く説いてくれているに過ぎないが、タイトルの心配りも大切か。
本書は次の4章から成っている。
1、自分とは何者か‥神経症ー私はなぜ哲学者になったか。欲望論哲学の出発点。
2、世界はどうなっているか‥宗教のテーブルと哲学のテーブル。哲学のテーマー「神」と「形而上学」について。宗教と哲学の弱点。
3、なぜルールがあるのか‥大貧民ゲームで近代社会を体験する。
4、幸福とは何か‥ガウェインの結婚ー「自分の意志を持つこと」
我々に大切なことは、「一般欲望」「自己欲望」に抗して「自分の意志をしっかり持つこと」「自分の本質を刷新してゆくこと」である。
「あとがき」はないが、若い時からしっかりと「自分の意志で考えて生きる」ことが結論と言える。