流した汗の分だけ
★★★★☆
本書によれば、「今の歌舞伎町に何かあるんですか?」と20代の週刊誌記者が
したり顔で著者に言ったという。その言葉に著者はこんな風に反応する。
昔からなにかあったのか? 派手な銃撃戦や人殺しがあれば、なにかがあると
言えるのか? 小説や映画じゃあるまいし、現実の歌舞伎町に目に見える形で
なにかがあるわけがない。場末のバーやキャバクラにちびちび飲みにくるだけで、
「取材活動」をやったつもりになっているのか?
著者はそして、歩き回るというかほっつき回る道を選ぶ。
何があるかわからない土地で徐々に協力者のネットワークを広げ、
そこからまた新たな人脈が連なり、インタヴューへとつながっていく。
本書はある種のビルドゥングス・ロマンであり、
流した汗の分だけ真実がある、という言葉を思い出した。
ここに書かれなかったもっと大きな闇を見たい、という思いを込めて
星をひとつ減らしました。
歌舞伎町最高傑作!!
★★★★★
たまたまコンビニで買った『漫画実話ナックルズ』という雑誌で、永江朗が書評を書いていた。その冒頭に「この本は、これまで歌舞伎町について書かれたものの中で最高傑作だ!」と書かれていた。で、買ってみた。読んでみた。うん、確かにこの本は“最高傑作”でした。歌舞伎町ってやっぱり怖いところだなぁ…なんて田舎者の僕は思うのでした。
おもろー!
★★★★★
今、新たに歌舞伎町という街を丹念に取材した本。歌舞伎町の今が生々しく伝わってくる。いまなお、歌舞伎町という街の許容度は高いのだなと感じた。
中国人マフィアから日本人の女の子まで、共通すること
★★★★★
なぜ無理に無理を重ねて生きて行くのか?
薬物に走らざるを得ない人は、どうしてそういう生き方しかできないのか?
どうして体を売って生きて行く女の子がいるのか?
今まで、ヤクザ的な生き方をしている人を見たり聞いたりするたびに感じてきた謎が、この本を読んだことで、私の中で少し解け始めた気がする。
この本の中には、何人もの表情豊かな日中の男女が登場する。
中国人マフィアに入った日本人(!)も登場する。
一気に読み進むうち、共感と反感の両方を感じ、私は混乱の中にたたきこまれ涙ぐんだ。
そして、日中の男女たち一人一人が、その人固有の「物語」を生きていることを生々しく感じた。
いわゆる「中国マフィア」たちが、まるで自分の友達の友達に一人はいそうな身近な人物に思える。
だけど、彼らのやってることを私が見たら「極悪」なことだと思う。
とにかく、彼らは私たちと地続きのところでもがきながら生きている。
この本を読んだ感想として、なんで犯罪グループに入るのか?という問いに私が答えるとしたら、「仲間がほしいから」なんじゃないかと思う。
でもそれは、(いろいろありつつも)日本でぬくぬく生きてきた女子である私だからそう思うのかもしれない。
そんな私とこの本に登場する人たちの物語は大きくかけはなれている(いまもって消化不良気味)。
だけど、私と彼らに共通すること、それは自分の「物語」を必死に守りながら生きているということだ。←ちょっと元気になれます。
中国人マフィアとその彼女、それぞれの独白の章は必読です。
たぶん男の人向けの本だけど、女の子に読んでほしい本です!
歌舞伎町のヤバい社会学
★★★★★
歌舞伎町を描いた小説やルポは多数存在するが、この本の著者である小野登志郎ほど、丹念に取材をした作品はなかったのではないか。
著者は対面での取材に拘り、身の危険すら感じながら、歌舞伎町を形作っている人々に肉薄している。
まさに歌舞伎町版『ヤバい社会学』ともいうべき傑作で、読了後は、歌舞伎町を楽々と超え、人間の存在の哀しさが眼前に迫ってくる。