これは酷い、典型的トンデモ本
★☆☆☆☆
鬱で休学中の者です。
親に薦められて(というか押し付けられて)読んでみましたが、タイトルからして胡散臭いなあと。風が吹けば桶屋が儲かる的な。
著者は医学博士とのことですが、本文を読んでも、断定口調、論理の飛躍が多く、どうみても科学的な文章ではない。そもそも論理の根拠となるデータを示した図表が一切登場しないし、先行研究の参考文献一覧すらない。それだけでも信用するに価しない。
サブタイトルからして「体を温めれば、ストレスに強くなる」と。反例が一人でも出ればその命題は偽になりますが?まあ「体を温める」とか「ストレスに強くなる」の厳密な定義がないから、いくらでも言い訳はできるのかもしれませんが。要するに科学的態度で書かれた本ではない。
漢方・東洋医学への言及が多く、精神医学よりむしろそちらが専門なのかなと(血液内科専攻とのこと)。「博士」の肩書きだけの門外漢がいい加減なことを発言すると混乱するからやめてほしい。別に漢方・東洋医学が非科学的だから胡散臭いなんて言うつもりはなく、経験的な治療法の実効性はよく研究されるべきだけど、医者・研究者自身が非科学的態度を取るなら、それは医学ではなく、宗教です。前近代の加持祈祷と大差ない。
著者の提案する方法で鬱が軽快したとの人の寄稿がいくつかありますが、教祖様を讃える信者たちみたいで気持ち悪い。体を温めたことが主原因で回復したのかも不明だし、そもそも治療に失敗した人は寄稿しないわけだし。
著者は科学的に真摯な態度、社会的責任より、本が売れて自分の病院の患者が増えれば儲かるから、そちらのほうが大事なのかなあと、疑ってしまいます。
帯に「家族や恋人の体温を知っていますか?」とあるけど、この本の信者になって周囲の鬱患者に無理強いするのは、絶対にやめてください。迷惑です。しかし、この程度の胡散臭さも見抜けない科学リテラシーの低い社会に、むしろ恐怖します。