歪みつつも美しさを感じる音
★★★★☆
ビーチ・ハウスは、男女2人組デュオ。ボーカルを担当するヴィクトリア・レグランドの叔父は、映画「シェ
ルブールの雨傘」等多くの映画音楽を担当してきたミシェル・ルグランである。
他レビュアの方が指摘されている様に、海外のメディアで早くも高評価を集めている彼らの通算3作目。
正直言うと、未だに世評の高評価に見合った程の「飛び抜けた」価値をこの作品に見出せずにいる。し
かし何度も作品を聴き返すうちに、何となく彼らが評価され多くのファンを持つ理由も見えてきた。
まず、ヴィクトリアのユニ・セックス的な魅力を持つ独特の声である。初めこの作品を聴いた際、男性が
歌っているのかと思った。ぱっと聴きでは男性とも女性ともとれる不思議な魅力を持つ声だ。
また、「ドリーム・ポップ」と形容される音楽の個性である。プログラミングと主にギター・鍵盤楽器を前面
に押し出した音楽に攻撃的な色は薄く、作品全体に渡りエコーを強めに掛けている。その上に独特の色
を持つヴィクトリアの声が飛び回ることで、美しい浮遊感を出している。
注意深く作品を聴くと、「ウォーク・イン・ザ・パーク」では意図的にオルガンのレトロな音を強調したり、「
ノルウェイ」では歪んだギターの音を出したりと、細かい音への拘りを感じる。この辺りの感覚が一筋縄
ではいかない歪んだポップスを産み出すのだろう。
冷静に分析してみると結構魅力的な点が挙がってくるもので、この種の音楽が好きな人が多いのも、世
評が高い理由も何となく判る。個人的にはもう少しメロディーやコード進行に動きのある音楽が好きなの
で、ストライクゾーンの作品では無かったが嗜好の問題であり、上述した様なドリーミーなポップスをお求
めなら推薦できる。