歴史学の原点 最先端
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考えてみれば「セネガル史」や「サントーメ・プリンシペ史」ではなく、「アフリカ史」というのが象徴的である。近代になってかなり強引に作られた地域概念や国家であるからであろう。また、現在の歴史学はヨーロッパや中国、日本で積み上げられたものであり、そのままかの形ではアフリカを取り上げるのは困難が伴ったり、ほとんど無視や蔑視に近いことさえある。
そんな中で「アフリカ史」を提起し、構築していくのは大変挑戦的なことであるといえる。
まずはオーソドクッスに自然環境、言語集団から説き起こし、東・東北アフリカ、東アフリカ沿岸部、インド洋西域島嶼世界、西アフリカ、バントゥ地域、南部アフリカに分けてその歴史展開を論じていく。そして人類揺籃の地、奴隷貿易、近代のアフリカ分割といったテーマを論じ最後に「国民国家と政治社会の未来」について討論する。
日本人にはどうしてもアフリカへの知識や理解は一面的・観念的になりがちであるが、光(人類発祥の地や大自然)や陰(植民地支配、紛争、エイズ、低開発)を乗り越えて、公平で包括的な歴史研究と世界認識への課題を突き付ける一冊といえよう。