黄蝶の橋 更紗屋おりん雛形帖 (文春文庫)
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五代将軍綱吉のもと、元禄文化が花開く江戸。京の呉服商「更沙屋」の一人娘・おりんは、親も店も失い、浅草今戸に住む叔父夫婦と長屋で通い奉公をしながら細々と暮らしている。いつか更沙屋を再建することを夢見て――。
そんなある日、更沙屋を建て直すために貯めたお金を、叔父の善次郎が黙って持ち出してしまう。理由を問い質すと、江戸を騒がせている犯罪組織「子捕り蝶」に誘拐された飛松という7歳の少年を助けるためだという。飛松は、小僧として働いていた奉公先の大黒屋の息子とともに誘拐されたが、大黒屋の主人は息子の身代金しか支払わなかったため、飛松は帰ってこなかった。飛松の命が危ないと知った善次郎は、飛松救済のために大黒屋に誘拐組織に渡してくれとなけなしのお金を持参して頼み込むが、自分の息子が戻ってきた今となっては飛松の命などどうでもよいとばかりに断られてしまう。
父親は借金を残して死に、姉は吉原に売られるた飛松。事実を知ったおりんは、飛松奪還のために奔走する。ところがそこには上州沼田藩主、真田信利の圧政に苦しむ領民の姿と藩政を揺るがす大きな事件が……。
史実にもある沼田藩改易事件をもとに、松尾芭蕉や新井白石、大老・堀田正俊、杉木茂左兵衛門といった実在の人物が重要なストーリーテラーとして登場し、史実とフィクションが入り混じった人間ドラマも読みどころのひとつ。華やかな大名家の生活を描く一方で、増税にあえぐ貧農の悲しい運命にもスポットを当てています。