「人に酒を注ごうとする人は、人に酒を注いでもらいたいと思っている人だ」
これは、本書のはじめに紹介される「相手の関心事」を見抜くちょっとしたコツだが、本書ではこのように日常の些細な部分から心配りのコツが伝授されている。また、つい口が滑ってしまったらどうするか、後に引かない誘いの断り方、人を待たせるときにイライラをどう和らげるかなど、よくありがちな気まずい場面を乗りきるためのコツも数多く紹介されている。さらに相手と親しくなるための心理術として「相手のひそかな自慢をほめる」「わざと相談を持ち掛ける」「わざと乱暴な口をきいてみる」など、なかなか興味深いアドバイスもある。
本書を読んでいると、人から好感を持たれる理由は特別目立ったことをするからではなく、日々の些細な気配りの積み重ねによるものなのだと実感させられる。著者自身、非常に細やかな神経の持ち主だということが伝わってくる。文章は、全体的に論理的で非常に説得力があるが、ひとつひとつの話の流れが少々単調で読み疲れする感があったのは否めない。(大角智美)