ユニークな角度からの解同批判論
★★★★★
これは凄い本である。著者は在日朝鮮人としての立場から、部落解放同盟(特にその中心人物である松本治一郎)が全国水平社の時代からいかに天皇制にすり寄ってアジア侵略に加担してきたか、「反差別」の美名に隠れていかに民族差別を支えてきたかを膨大な史料に基づいて徹底的に検証しており、しかもその筆鋒は辛辣を極める。
あとがきによると、著者は1992年9月、部落解放同盟矢田支部の集会で講演を依頼されたが、この本に書いてある通りの内容を語ろうとして報告の要旨を送ったところ、「この内容では大衆に聞かせるわけにいかない」と講演を邪魔されたとのことだ。日ごろ「差別糾弾」を謳っている団体(部落解放同盟)が糾弾の矛先を自らに向けられそうになると妨害にかかるこの滑稽ぶり。本書は、ユニークな角度からの解同批判論として出色の出来である。