俳句を作るヒントが得られる
★★★★★
「俳句発想法」と言っても、小難しい理論を並べ立てているのではない。100の季語を見出しに立て、先人の名句を例に引きながら、こんな句ができるいきさつを作者になり代わって解説しているのである。
降る雪が別るゝひとの瞳(め)にも降る 五所平之助
ドラマ仕立てです。「時効だと告げる運河に雪降れば」(櫂未知子)。もう時効にしたいような過去も降る雪が清算してくれます。「錯覚は雪一片にはじまれり」(柿本多映)は物語の発端を句にしました。
このように、その句の勘どころを鋭く捉え、現代性のある句作りの指針をしてくれている。参考の例句が適切で説得力がある。
以下、いくつかの季題の下に書かれている簡潔な「句作りヒント」を紹介しよう。
「花火」…喩えの技を磨く
「夏痩」…まず家族をスケッチ
「菊」…香りにしぼる
「柿」…いかにも日本だという句を
「蝶」…何かに見立ててみる
「秋刀魚」…ミスマッチで味を出す
「秋の暮」…乾いた抒情
これら一言が実に参考になる。