郷愁を限りなく誘われる叙情的童画の世界
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『週刊新潮』創刊号より表紙絵を描いてきた谷内六郎の作品集。春・夏・秋・冬、日本の懐かしい風景・風物詩を童画ふうの絵とともに紹介している。春「追いかけてくるつむじ風」ではさくらのはなびらと子どもたちが童話を感じさせる。夏「水底の記憶」は川魚を捕る少年の姿に郷愁を誘われる。秋「柿に残る西陽」は柿の枝にのぼる少年の姿が白壁に映り印象的。冬「寒椿」は雪国のお正月を迎える少年少女の赤いほっぺ。どの一つをとっても、ほのぼのとした抒情的な作品ばかりで、純粋無垢な童心に返ってしまう魅力に富む。
北杜夫は解説で「遙かな母なる胎内へ帰ってゆくような」「郷愁を誘う、ほのぼのとした絵」に「二度と現れぬであろう天性の画家であり詩人であった」と賛辞を惜しまない。
日本人の心の中に生き続ける『日本の四季』…叙情詩・叙情画の世界が楽しめる、癒しの世界。