古い本であるが故
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この本はフランスの音楽評論家が、60年代に書いたもの。
「こんな古い本が役に立つのか」
ではなく、
古い本であるから、
現在までの数十年間で「何が変わったか、何が変われていないか」
を知る事が出来る。
フランス人の、熱い高揚が伝わってくる文章。
和声の歴史
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原題は単に「和声」(L'Harmonie)ですが、邦題が内容を適切に表しています。和声の面から西洋音楽の歴史を説明しています。
和声に関する書物はたくさんありますが、多くは技術的・抽象的な内容の実習本です。本書によれば、そのような本で使われている概念が歴史上のどの辺りから抽象されたものなのか把握できると思います。
壮大な内容を新書サイズに詰め込んでいるのがいかにもクセジュらしいところです。記述は非常に凝縮されているので、理解するためには和声についての基礎知識が必要となるでしょう。
歴史観をみる。
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まさに歴史としての和声の遍歴をダイナミックに捕らえており、著者の持つ歴史観が余す事なく伝わってくる。
西洋多声音楽の発展の歴史を「和声」の側面から斬る
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《調性の崩壊は、不協和の印象がじょじょになくなってゆく現象として説明することができる》。ごく当たり前なことかも知れないが、これは著者の音楽史や和声学に対する精緻で真摯な研究が導き出した一言である。
和声概念の拡張の過程を、各時代時代の主要な作曲家をとりあげつつ的確に追ってゆくやり方は(それが多少フランス音楽史に傾きがちなきらいがないわけではないとはいえ)鮮やかである。