無敵の銀翼
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革新的な傑作機、九六式艦上戦闘機を特集しています。
設計主務者の堀越二郎氏にとって、本機は後継機の零戦より特別な存在とされていますが、1971〜86年までの先代「世傑」では採り上げられませんでした。本書以外に纏まった著書も少なく、他には81年の潮書房「丸メカニック第28巻」、それに加筆して零観と合本にした、95年の光人社「軍用機メカ・シリーズ第16巻」、さらにそれを単行本化したもの(つまり出自は同じものばかり)しかないようです。
本書は91年3月号で、この頃の「世傑」は安いのも魅力。巻頭のカラー側面図集から、実機解説、細部イラスト集、写真キャプション、塗装とマーキング、1/72各型変遷図まで、すべて野原茂氏と押尾一彦氏がこなしています。内部構造や戦記物語は最小限にして、写真とイラストで分かりやすく解説する手法です。本機に対するネガティヴな記述はまったくありません。掲載されている多くの写真からは、極初期の零戦と同じような、中国大陸で無敵だった本機の先進性、孤高の存在だったことを感じました。未だに「零戦は米国機のコピー」と吹聴している欧米人にも読んで頂きたい一冊です。