つながった2戸が1棟になった二戸一の連続住宅(長屋)です。日本では上下につながることが多い建物タイプ。アフリカのケープタウンでは黄緑とピンク、水色と薄紫など、鮮やかなパステルカラーがさまざまに組み合わさって二戸一を形づくり、それが多く立ち並んだ町並みとなっています。階段付きの玄関では、ポーチに手すり壁を設けてバルコニー状の構成にして、白い花びんを2個重ねたような白い手すり子だけを装飾的な形にして強い印象を与えています
ミコノス島の家は、白壁に青、赤、黄などの鮮やかな着色を窓、玄関、バルコニーなどの開口部や手すり、階段にほどこしますが、単色が多く、この家のように一軒に多色を配することはあまり見られません。白壁に色鮮やかな花の絵を描くなど、伝統的な住宅とアートを融合させたデザイン住宅といえますが、家の壁などに絵を描くのは、ヨーロッパやアフリカの一部地域で昔から見られる習慣です。ギリシャでは106頁のヒオス島のように、家や建物に幾何学模様を描く島があります
セント・ジョンズはカナダの北東部、アバロン半島の東端に位置する港町です。北米で最も古い歴史をもつ町といわれますが、世界一霧の深い町としてギネス認定されたことで知られます。深い霧の中でも家を見分けられるよう、漁船用の塗料で家をカラフルに塗ったことで、色とりどりの町並みが実現したとか。この家の玄関まわりも、白と茶のチョコレート細工で飾ったケーキのようです。玄関や窓の上にある三角をペディメントといって、西洋人がギリシャ時代から好む形。昔から建物の正面に付け、デザインのポイントという以上に、これで家の顔を作ってきました。特に玄関の上、三角の底辺の中央が途切れているものをブロークン(破れ)ペディメントといって、17世紀のマニエリスム時代から取り入れられてきた歴史ある形です
家の外壁や壁に色鮮やかな幾何学模様が描かれています。カルチュラル・ハートランドにある小さな村の家に、三角や四角の模様を描くのは、ンデベレ族の女性です。白い漆喰に黒い輪郭線をくっきり描き、顔料を加えた鉱物や土で色づけします。定規など一切使わず、すべてフリーハンドです。もともとは牛糞の壁がスコールで崩れたときの自然の模様から生まれたともいわれます。それがホントなら流れるウンコから幾何学模様を思いついて、鮮やかに色づけする発想がすごい。ペイント技術そのものは95頁のソト族から伝わったともいわれていますが、壁画はンベデレ族の独自の文化として発展しました。一説には、デザインに魔除けの意味があるとされます
フリーステイト州は、外壁を色鮮やかな抽象絵画で彩るソト族が住む地域ですが、ミスフィールドはその南部、人口約1,200人、牛や羊などの畜産業くらいしかない片田舎。そこにある何気ない紫系に着色された宿泊施設ベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)です。階段を上ったポーチ入口で2羽のツルの銅像がお出迎え。シカやウシのツノが彩色されていたり、水中めがねをかけていたりと、アート感あふれるB&Bです。10本のオーダー(丸柱)で支えられたひさしをかけ、両脇に喫茶コーナーを備えたかなり大きめのポーチです。前頁の家もそうですが、ポーチを中心にした建物で、建物の中よりも外との関係で家や建物をつくったのでしょう。日本でもウッドデッキなどを使って、町に開く家が増えてきました