12世紀と現代の往還
★★★★★
本書主要部の「サンティヤーゴの巡礼路」は、
『サンティヤゴの巡礼路』世界の聖域16、講談社、1980年
の再録です。著者は、その後も、幾度か巡礼路を訪れているとのことで、写真は全て著者自ら撮影したものに差し替えられています。
著者の視点は現代よりも、12世紀当事の巡礼の姿を捉えることにあるます。現代の打ち捨てられた旧巡礼路や廃墟となった建物をたどりながら、巡礼最盛期の巡礼たちの姿をそこに見ています。
当事の資料や教会の装飾像等を基に、当事の人々が大きな苦難を耐えながら巡礼する姿を描き出しています。多数の写真や図版も、読者が、著者とともに12世紀の巡礼に思いを馳せることを助けてくれます。
本書の後半には、有名なカリクストゥス写本(Codex Calixtinus)(12世紀)の中から『サンティヤーゴ巡礼案内書』の全訳が付されており、これもまた読者に12世紀の巡礼者の姿を彷彿とさせてくれるものです。
本書は価格が張るのが難点ですが、勇気(!?)を出して購入する価値は十分にあると思います。