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監督 小津安二郎 (ちくま学芸文庫)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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小津作品は小津作品でしかわからない ★★★★★
1981年、フィルムセンターでの小津作品の特集上映で、パンフレット
の冒頭に本書の原形が載ったときから、今日にいたるまで小津映画の極
上のガイドブックであり続けるこの著作にいまさらコメントするのは、
まったく不要と思います。

しかし、増補された部分について、一点だけ指摘させていただければ、
「憤ること」の章で、タオルやてぬぐいを「男性にふさわしい」小道具
として腰などにたらす戦後作品の例として、「ゴルフに興じる佐分利信
までが、腰のあたりにそれをたらしている」と引かれていますが、その
作品は、本書にあるような『お茶漬けの味』ではありません。
『お茶漬けの味』でもタオルを腰にぶらさげている例は出てきますが
「佐分利信がゴルフに興じる」ことは、『お茶漬けの味』における
佐分利信の「プリミティブ」で「インティメット」な嗜好から考えても
ありえません。
また類似作品ともいえる『淑女は何を忘れたか』では「雨が降る」ことで
斎藤達雄がゴルフにいかなかった事実が妻の栗島すみ子に露見することも
指摘しておくべきかもしれません。
戦前の『戸田家の兄妹』は当然除くとして、「興じる」という表現から、
あの、店でゴルフボールを買うシーンを思い出し、『秋日和』に誘導され
そうですが、正しくは、『彼岸花』です。
しかし、佐分利信はゴルフに「興じて」いる訳ではなく、むしろ娘の
有馬稲子の結婚を控えて、ゴルフに身が入らなかったように描かれています。

「振りはらうこと」では、『東京暮色』で有馬稲子がマフラーを脱ぎさる
バストショットとともに『非常線の女』の田中絹代が、マフラーを一瞬
振りはらう横から全身をとらえたショットについてもぜひ触れて欲しかった
です。
『東京暮色』と『非常線の女』には二十数年の歳月にかかわらず通底した
部分があることは「晴れること」の章でも紹介されていますが、同じ
アクションで通底している二人が、今度は、母と娘として『彼岸花』で
共演しているのは驚くべきことです。
著者も指摘されているように、娘の代弁者たる田中絹代が、バストショットで
夫の佐分利信に憤りをあらわにする直前、立ったまま抱えていた夫の上着を
畳の上にどさりと落とします(佐分利信のゴルフのシーンはこのシーンの
後に続きます)。

ところで、岩下志麻が卓袱台の下の空間を通してタオルを握りしめている
のが見えるローアングルで思い出しましたが、『生まれてはみたけれど』
のおにぎりの場面の最後に、吉川満子がにこにこしながら、朝食の準備を
して、伏せたお茶碗の中から卵が出てくるところがあります。
そこで吉川満子が、卓袱台の下でエプロンのポケットの中からなにかを
取り出してカードをシャッフルするようなショット、あれ一体なにをし
ているのでしょうか。
スノッブな小津ファンだった頃 ★★★★★
 僕は小津の映画は 相当好きだ。

 1960年代に生まれ 1980年代が主たる青春時代の舞台だった僕が 小津のどこに惹かれているのかは 正直今でも分からない。
 これが例えば 黒澤明であれば 考えることはない。どう見ても 黒澤映画は世界的に考えても面白いからだ。
 それに比べて小津の映画は 好きな理由が難しい。

 蓮寶重彦の本書は 小津好きの映画ファンには いっときバイブルのような様相を示していたと思う。本書を抱えて 今は無き銀座の並木座に行っていた頃の僕は 今考えても スノッブな小津ファンだったのだと思う。それからもう20年経った。

 LDでたまに見る小津映画は やはり面白い。中年になった今の自分の方が 鑑賞力が上がっていることにも気がつく。
 そんな中年になって本書をぱらぱらと見る。見ていると1980年代がデジャビュのように立ち上がってくる。
表層批評の名品 ★★★★★
蓮實氏独特の文体に酔っているうちに、知らずと小津の世界に引き込まれている自分に気付く。伊丹十三はかって、小津の映画が上映されないことを皆もっと怒るべしと、蓮實氏との対談で語った(『フランス料理を私と』所収、実は岸恵子氏を含む鼎談)。しかし今や、小津がフィルムの表層にやきつけてくれた、穏やかで暖かいかっての日本の家庭生活は、失われたフィルム以外はすべてDVDによって、いつでも鑑賞できるようになった。蓮實氏の功績の一つであろうが、この書によること大である。感謝をささげよう。しかし、氏の唱える「表層批評」の実践がよく為されたという意味においても、歴史的一冊であろう。その表層にこだわる批評の一部始終をじっくり味わっていただきたい。
それほどのものか? ★★★★☆
蓮実重彦の本書は80年代の著作と言え、今日も通じる小津安二郎
論である。面白い。面白いのは著者の視点と思索である。
小津作品とはかくも複雑な謎に満ちたものだろうか。我々は今日の
眼から小津作品を評価しているだけではないか。すでに失われた昭和
20-30年代の日本を憧憬しているだけではないだろうか。小津の

作品は例えば国際便の機内で他に何もしようのないときに見るには
十分味わえるが、日常なかなか見ても楽しめないものだ。連続して
見たらまず耐えられないほどの冗長を感じる。
昭和30年代後半、日本映画が衰退したが、その一因は小津のような
作品が跋扈したこともある。
小津の過大評価は戒めたい。

それほどのものだろうか? ★★★☆☆
蓮実重彦の本書は80年代の著作と言え、今日も通じる小津安二郎
論である。しかし、小津作品とはかくも複雑な謎に満ちたものだろ
うか。我々は今日の眼から小津作品を評価しているだけではないか。
すでに失われた昭和20-30年代の日本を憧憬しているだけでは
ないだろうか。小津の作品は例えば国際便の機内で他に何もしようの

ないときに見るには十分味わえるが、日常なかなか見ても楽しめ
ないものだ。連続して見たらまず耐えられないほどの冗長を感じる。
昭和30年代後半、日本映画が衰退したが、その一因は小津のような
作品が跋扈したこともある。
小津の過大評価は戒めたい。