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鉄道ひとつばなし 2 (講談社現代新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 講談社
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仮想敵への一方的害意は何とかならないのかな ★★☆☆☆
例えば、郵便事業のあり方や郵政民営化について論じようとするとき、切手収集家向け雑誌の記事に大袈裟な表現や専門用語の濫用がみられるとか、一般向けに書かれていないとか指摘してみたところで、特に意味があるとは考えにくい。限られた人にしかわからない語彙というのは確かにあって、徂徠学が〜とか、丸山の本店・夜店論が〜とかは、原先生の本業方面に関心があれば知っていて当然だが、本書の読者一般に期待してよいのは、せいぜい本居宣長という名前を聞いたことがあるか否か辺りが限度であろう。紀要に小論文を載せる時と、出版社のPR誌に雑文を書く場合では、違う読者層を想定しておられるであろう先生は、「鉄道ダイヤ情報」や「鉄道ファン」といった趣味雑誌の読者、或いは「鉄道友の会」なる愛好会のメンバー(たかだか数千人ですよ)を念頭に置いて、これを「マニア」と一括りにし、「ハエ8編成」の意味が分からない僕ちゃんはこいつらとは違うもんねと仰るのだが、その自己規定は、永六輔のラジオ番組(関東ローカル)に出演した際に迂闊にもマニア扱いされてしまった学者先生の自尊心を回復するのに有効なのだろう。しきりに「文化」を礼賛するのは、工学や経営に疎いことの裏返しだろうか(大手私鉄の経営に関する歴史的考察を延々続けているのに、例えばJR東日本の連結経営の分析とか、機関投資家に対する説明責任についての想像力はまことに頼りない)。
困ったときの宮脇頼みも前作以上に顕著だが、そもそも内田百けん(←文字化け回避のため平仮名)の焼き直しに過ぎないとか、また長女がいささか無邪気に書いてしまった私生活のあれこれとか、宮脇について必ずしも肯定的な評価ばかりが支配する状況ではなくなりつつある中、オマージュ的なものは、せめて酒井順子程度の筆致に抑えておいたほうが良かったのではないか、と余計な心配も浮かんでくる。
いくつかの卓見が細部に宿っていることを評価して★2つ。

鉄道ファンの酒飲み話(いい意味で) ★★★★★
新橋のガード下で繰り広げられていそうな、鉄道ファンの飲みトークといった風情。
でも、というべきか、だからこそ、というべきか、前作同様とにかく面白い。

著者のいわゆる「鉄道マニア」に対する敵視ぶりとか、東急に対する近親憎悪とか、とにかく書きたいように書いているからこその面白さ。
「鉄道マニアは写真撮っているヒマがあったら路線廃止に対する抗議運動でもしろ!」などの主張は納得しつつも笑える。

一方で、大学教授らしく(?)時刻表のデータを使った緻密な分析も健在。
また、天皇と鉄道の関係など、考え込ませるテーマも多い。
著者の主張である「鉄道の地方・地域格差」などの問題提起もなるほどと思わせる。

ところで今回目立ったのが、宮脇俊三はじめとする鉄道エッセイ界の大御所への言及やオマージュ。
ひょっとして著者、その後釜を狙っている?
鉄道から懐古する古きよき「昭和」 ★★★★☆
前文で著者が断っているように、鉄道情報を細かく開陳するような鉄ヲタさん向けの本ではなく、鉄道から近代や都市を考えるコラムが40ほど。しかし、鉄道といっても、鉄道文学や駅弁、駅そば、海外鉄道と内容は豊富だ。鉄道に関心があるという程度の人には、へえと感じさせる情報も多く、この種の人に一番向いているのではないかと思う。

著者が日本近代史・皇室の研究者であることから、天皇に1章を割くなど、鉄道を通した歴史の記述が続く。また、かつて各地で独立して経営されていた駅そば店、駅弁店が次々とJR傘下のチェーン店に変わり、味が画一化されていく様を「駅そばの死滅」と痛烈に批判するなど、自身が少年時代濃い鉄道ファンだったころを懐古するコラムも多く、遠くなってしまった「昭和」の香りが立ち込めてくる。ほかにも、同書中に多々登場する福知山線脱線事故本の教訓として、また汽車旅ファンとして、今のJR(とりわけ西)の速度至上主義を止めるよう主張するなど、独自の主張も展開する。宮脇俊三の二番煎じではあるそうだが、擬人化された鉄道路線が生き生きと語り合う「全線シンポジウム」も読みどころ。

講談社のPR誌に連載されていたため、時々刻々変わる鉄道事情により、情報が古くなっている点もあるが、各回に付された細かい補注で最新事情を補っていて親切だ。ひとつ足りなかった思うのは、P110に日本一駅名が長い駅として登場する「ルイス・C・ティファニー庭園美術館前駅」。これは2007年5月に駅名変更して日本一を返上する。まだ、変わってはいないとはいえ、すでに明らかになっていることなので、入れるべきだったろう。

コラムで数ページで次々と違う話が出てくるので、ブツ切れ感は否めないが、読んでいて、著者とともに、日本各地、世界各地へ、また昭和の時代を旅するような楽しさを感じることができる。