小澤征爾は、このディスクの解説の中で次のように語っている。
「僕は音楽を魔法だと思っている。だって、音楽はひとりの人の人生だって瞬間にして変えることができるんだ。聴いている人をまったく別の世界や、聞いている場所ではない空間、まったく違う気分にだって運ぶことができるのだから」。
この魔法の一番凄いところは、人の心に、想像力という翼を羽ばたかせてくれることではないだろうか? まったく別の世界や違う空間に人を運んでくれるのは、結局のところ音楽が与えてくれた想像力という翼なのだから。
いい音楽を子どもに聴かせることがなぜ大切かといえば、この想像力という翼が子どもの心に力強く生えてくるからであろう。
このディスクの中には、「カルメン」「白鳥の湖」「結婚行進曲」「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」をはじめ、クラシック音楽の中の最も親しみやすい曲ばかりが、小澤征爾自身の選曲・構成によって組まれている。誰でも、リラックスして、肩の凝らない名曲オンパレードを楽しみ、そして想像力という翼を羽ばたかせることができる。
演奏は世界の超一流のオーケストラばかり、小澤が特に自信を持っている、生き生きとした名演ばかりである。注目されるのは、小澤はこれらのオーケストラを「僕の長年の大切な友だちであり、仲間たち」と呼んでいることだ。世界各国の6つの超一流オーケストラに対して、等しく遠慮なく「友だち」と呼べる飾らない人間性こそ、小澤ならではの貴重なキャラクターなのである。(林田直樹)