展覧会公式カタログ
★★★★☆
鈴木理策の故郷である熊野を題材にした作品展.昭和展のついでのつもりでのぞいてみたのだが,予想外に面白かった.前半は緑の森や滝・川面.大判の連続写真がもつ広がりとディテールが没入感を生んでいる.自然の中にいるように,近づけばディテールが見えてくるし,離れると全体が見えてくる.
人が炭焼釜の中の炭のように灼熱している熊野の火祭りをとらえた連作を経て,新作の「WHITE」シリーズへ.床から壁,天井まで真っ白な展示室の中に,白い作品がならんでいる.ひとつは雪景色.純白の雪景色の中に木々がわずかに覗く.作品に近づいていくとまるで自分が雪山の小径を歩いているような錯覚さえおぼえる.桜は,手前の大きくぼけた花の透き間にくっきりと遠景の花が見える.