L.M.O作品では、'69年の第1作目こそ怒りを含んだフリーな音塊がテーマ性を強く表現していたが、2作目以降は取り上げた楽曲の旋律をストレートに、大切に歌い上げるようなアレンジが特徴的であり、本作ではさらにそういう側面が強調されているように思える。ビッグバンドという形式が放つ「強さ」や「迫力」ではなく、むしろ淡々としており、強いていえば、各楽曲が「優しく」響くようなアレンジがなされているようなのだ。
今回のL.M.Oの試みは、「われわれ=正義/やつら=悪」や「民主主義/テロリズム」という単純な二元論に基づいて問答無用の力を「われわれの名において」振りかざす米国の現政権に対する、音楽的な返答として、もう一つのアメリカを提示しようというものであるように思える。それが響きの優しさから見えてくるし、そういう意味では本作は、表面的な耳障りの良さ以上に野心的な意味を持っていると言えるのではないだろうか。
収録曲では、デヴィッド・ボウイとパット・メセニー作のレゲェ風にアレンジされた「This Is Not America」も楽しいが、特に、感情豊かに歌い上げつつ終盤に向かって盛り上がっていくビル・フリゼール作「Throughout」が強く印象に残った。