ほとんどの余計なものを排除したシンプルな画風。そんな奈良美智の描く絵には魂が宿っている。おおきな目で何かをじっとみつめている子供は、大人になってしまった者に強く何かを訴えているようでもある。ちょっとおどけたかっこの子供達もそれぞれに意志をしっかり持っている。奈良美智の絵は、絵がシンプルなだけに見れば見るほどに深い印象を得ることができるのだ。
絵に言葉が添えられている画集というのはあまりみかけないが、この本の中の言葉はごく自然に、絵の中の子供がつぶやいたり考えたりしている「思い」のようなものだ。私はそんな言葉達を読んでいると、自分の心の深いところで素直に絵の発する輝きを受けとめることが出来る。
表紙のキャンディーをくわえた子供のように単純にかわいい面と、その裏の傷つきやすく残酷でもある面が一体になった奈良美智の絵。そんな絵に宿ったスピリットは私達の心を強く揺さぶる。