気楽に楽しめる整数論
★★★★☆
本書はガウスの労作「整数論」について解説したものである.話の中心は,円分方程式,平方剰余の相互法則,複素整数の作るガウスの整数環などであるが,それらをよく理解できるように初歩的なところから親切な説明がなされている.重要な結果は四角で囲んであって分かりやすい.欲をいえば,それに適当なタイトルをつけ,索引をつけてあれば,あとから見るとき便利であっただろう.証明は,あまり難しいものはないので,気楽にたどることができる.
p.77のオイラーの関数の表で,mの値が全部1だけずれているのはひどい.p.114の図で直線HH'が格子点(2,1)の真上を通っているのはまずい.p.168の図にB', C'を書き忘れている.他にもミスプリントがいくつかあった.
p.176にヒルベルトとコーン・フォッセンの著作からの引用として「円の内部に含まれる格子間隔1の正方格子の格子点の数は,半径を大きくしていくと漸近的にその円の面積に近づく」という意味の定理がわざわざ掲げられているが,どんな図形であっても相似拡大していく限り漸近的にその面積に近づくことは,次元解析から自明のことではないか.