分かりやすい多読の入門書
★★★★★
本書は、50代以上の世代の方を主に読者対象とし、英語を学びなおしたい
方のために、定年後の「趣味」としての多読の楽しさを知ってもらう
ために、また多読の英語学習法としての有効性を周知するために、
多読の原理や三原則から分かりやすく、その理念を紹介した入門書である。
したがって、「勉強」ではなく、英語と楽しく接し結果として英語の力も
高めましょう、という筆者のスタンスで書かれており、それは即ち多読の
理念でもあるので本書の記載に矛盾なく書かれている。
また、本書の最後には実際に多読を始める方に向けて、入門、基本、
日常会話、ジュニア、読書、文学それぞれのレベルにおいて多読図書と
多読図書を置いている図書館を紹介してくれているのが大変助かる。
こういった図書を紹介できる背景には、筆者のこれまでの読書量も
感じられる。
ただ一点気になったことは、多読の効果についてはあくまで筆者の
主観的な視点を中心に書かれているということである。
現在の第二言語習得の研究における多読の効果以上の内容がそこには
書かれている場合が散見される。その学識との整合性については、
後著において示されることを期待したい。
50代以下でも役に立つ、著者の体験からの説得力がある内容
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著者自身が50代になって多読を始め、大きく世界が開かれたという体験に基づいているので、説得力がある。
第1部「『大人の趣味』英語多読のすすめ」第6章に多読に関するさまざまなFAQがある。「本当に文法を学ばなくても大丈夫ですか?」には若干異論があるが、「知らない単語をとばしていたら、いつまでもわからないままでは?」や「大人が子どもの本を読んで本当に楽しめますか?」に対する答えには納得した。しかし、本書の真骨頂は第2部「大人の本への道」だ。著者の経験に基づいて、「入門」「基本」「日常会話」「ジュニア」「読書」「文学」と著者独自の6段階に分けて、実質的に大人の本になる「読書」レベルに達するには何をどのように読めばいいのかを、具体的にタイトルをあげながら、かゆいところに手が届くように親切に示している。写真で本の見開きのイメージも示されているので、文字の入り方の感じがわかって便利だ。この内容は、表紙には「50代からの人生を変える!」とあるけれども、30〜40代の人が読んでも十分に役に立つと思う。洋書多読へのやる気をかき立てる1冊だ