戦争がもたらしたもの
★★★★★
終戦直後のイタリアの諸都市の状況を赤裸々に写し撮った、貴重な資料としての側面も持っているが、この作品でロッセッリーニ監督は戦争の悲惨さのみを訴えたのではなく、大戦末期に生きた人々がどんなことを考え、どのように行動したかを克明に追った。おそらく彼の意図は、ありのままの逸話を観客に提示して、それを観る一人一人に戦争という行為についての明確な自覚を促すことにあったと思う。それだけに彼の手法はドライなドキュメンタリー・タッチで、取り立てて感傷的なシーンもなければ、登場人物に英雄的な個性を与えてストーリーを展開することもない。演じている役者も殆どが素人だ。いずれにしても三部作の総てを観ることが望まれる。そこには解放者としてのアメリカ賞賛もなければ、ドイツに対する抗議もない。もっと深い意味で戦争がもたらしたもの、戦争という不幸な体験を通して明らかになった人間のさがを冷静に見詰めているからだ。
1946年の白黒作品で、助監督とシナリオはフェデリコ・フェッリーニが協力している。イタリア語の原題は『パイサ』で同郷の人、地方人を意味するパエサーノのナポリ方言。