著者は拒食症の増加は現代におけるサトル・ボディの問題を、端的に示した例だとする。ボディ・イメージの歪み、つまり患者が自分の外見をあるがままに認知していないことがこの病の原因だというのだ。たとえば周囲からはやせすぎにすら見えるのに、自分は太っていて醜いと強く思い込んでいる女性の場合である。そのボディ・イメージは当人にとってはリアルなものであり、単なる想像上の存在というより現実とイマジネーションの中間領域にある身体、つまりサトル・ボディなのである。
あとがきで著者自らも認めているが、本書には抽象的な表現や専門用語が頻出するし、「ESP」「時空人」といった言葉も当たり前のように使用されている。心理学の基本知識や、精神世界への興味の無い人が気軽に手に取れる本ではないかもしれない。だが精神と身体の調和を意識できなくなった現代人へ警鐘を唱えるという、普遍的なメッセージを持つ興味深い1冊であることは確かである。(工藤 渉)