人権というのは人類普遍の原理であるから、その形容として 国際や国内というような語がつくのは語義矛盾のように思える。
しかし、国民国家が前提となる現状世界において人権の担保のされ方が国によって違うことにかんがみれば、必要な区分の仕方といえるのかもしれない。
本書では第一章で国際人権法の「国内化」として憲法と国際法の関連付けの説明をする。第二章「国際人権レポート」として、具体的な事例を使いながら問題点を表出させる。そこでは精神保健法制度改革や日本警察の問題状況なども挙げられている。
三章で「国際人権法の国内的実施のための課題」として日本における問題点の指摘をしている。そこでは日本の法曹制度における国際人権の地位の低について、また日本は、国際機関への個人通報権を認める国際人権(自由権)規約の選択議定書を批准していないことの指摘をする。
普遍的価値である人権という概念は当然に日本国憲法でも保障されているわけであるが、その実施については絶えざる検証と努力が必要なはずである。そのためには外部からの視点というものを積極的に取り入れていく必要があるだろう。日本において人権保障が十分になされているかどうか、ともすれば保守的になり忘れがちな他者へのまなざしを、確認するために本書を手にとって見ることをお勧めする。