ナポレオン戦争の事実関係が、物語風に記載されているので、各戦役の全体像を容易に把握できる。その上で地図上で地名・日時を押さえながら、どのくらいの規模の軍隊をどのくらいの速度で移動させ、その意図は何だったか、そのためには何が必要だったか、技術的な限界はどこまであったかなどを考えることができる。その際には、邦文ならば「石原莞爾資料 戦争史論」を併読すれば詳細な事実関係を補うことができる。
かかる事実関係の把握から出発して、ナポレオンの戦争術の特色とされている、「兵力集中・各個撃破・包囲殲滅」が真に妥当するのか自分の頭で検証することができる。その作業により、事実から帰納的にナポレオン戦争術の特色を自分の頭で構築していくことができる。
その上で、クラウゼヴィッツ・ジョミニ・リデルハートのナポレオン戦争分析と比較検討することができる。事実関係の把握から出発し自分なりの理解を構築して臨めば、抽象的な議論や体系上の位置付けにそのまま持っていかれ、「兵力集中」といったテーゼだけが頭に残るといった事もない。
ナポレオン戦争を基点にして、大戦術(戦略)・戦術面で他の名将と比較したり、国家単位での国民戦争が、近代・現代においていかに変容していったかを考えることができる。