核心をついた良書である。
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近代文明をつうじて人間が歩んできた歴史には、
たしかにいまも恩恵にあずかることの多いのに感謝している。
だが、現代社会においてそうした恩恵の影に潜む暗い日常をおくりつつ
悲しんでいる方々が、いまだたくさんいらっしゃるんだと、
先生のご本には書いてあるように、僕は感じました。
今からでも遅くない。すぐにどうのこうのとゆうほど不安になってもしかたがない。
でも、気づくことの範疇に、新しい公害がいままさに知られ始めたのだと、
ぼくに訴えかけてくれました。
この本はとてもアグレッシブです。回りくどい理屈なんて一切ありません。
淡々と事実を積み重ねているだけにも思えますがとても大切なメッセージがつまっています。
この本を参考に環境ということの言葉のなりたち、現実社会、これからの行動規範を、
ぼくはぼくなりに見出そうと考えます。
もちろん経済学の本としても第一級ですね。(当然といえば当然か。)
20070617 神戸にて電信
人災も忘れた頃にやって来る
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私は本書を読んで自分の迂闊さを呪った。「人間はこういう風にして鈍感になって行くんだ」とも反省した。私は今50才。小学校から中学校にかけて「水俣病」、「イタイイタイ病」、そして「光化学スモッグ」等、随分と公害が騒がれたものだ。しかし、"いつの間にか"「公害は無くなった」と思い込んでいたのだ。
本書は最近話題になっている「アスベスト」問題を初めとして、「公害は終っておらず、それどころか状況は増す々々悪くなっている」ことを主張したもの。主な原因は企業の無責任と行政の怠慢にあると言う。「水俣病」、「四日市公害」の問題でそれを厳しく追求する。ヒドイ実態だ。政府が毎年発表する「環境白書」からも「公害」の文字が消えつつあると言う。「臭いものにはフタ」方式であろう。我々も「見たいものを見る」のではなく、現実を直視する姿勢が必要であろう。
著者はこの解決策として「維持可能な社会」の展望を語る。キー・ポイントは経済成長ではなく、福祉、教育、文化等を向上する方向で経済活動を行なうという事である。これが可能かどうかは私には分からない。しかし、「公害」という忘れかけた大きな問題に改めて目を向けさせてくれた警鐘の書。
公害とは
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さて、最近大手企業によるアスベスト被害が深刻化する中、出版された本です。過去そして現代と続く公害。公害とどの様に向き合うのかをダイナミックにかかれています。環境経済学が専門の著者ならではの切り口は鮮やかです。そこから公害とは何かそしてそこから環境を考え、維持可能な社会作りを提唱しています。非常にタイムリーな本だと思います。