ただいま個人情報漏洩中!: 学校での個人情報漏洩とPTA
 
価格: ¥0
■はじめに より
2005年に個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)が全面施行されて10年が経ちました。
これにより、国および地方公共団体、企業などでは、個人情報の扱いを非常に慎重に行うことが求められるようになりました。対応した条例やガイドラインが整備され、運用面からも当初の混乱は一段落したように見えます。
現在はインターネットを中心とした情報化社会での個人情報の取り扱いについて、新たな問題や従来の法令では不十分であった分野への対応についての検討がされており、第2段階にさしかかろうとしています。
一方2014年には、ベネッセ社での個人情報漏洩事件が社会的な問題として大きく報道され、個人情報保護は自分たちの身近な問題として、多くの人が関心を持つようになりました。これについてはこれまでの集団訴訟にはない非常に大きな規模の集団訴訟に発展しています。
このような中、個人情報保護法もしくは個人情報保護条例の法令の対象でありながら、現在でも「個人情報保護法ってなに?」や「は、それがなにか?」というような認識で活動しているところがあります...
それは、「学校」です。
本書では、公立小中学校(市区町村が設置している小中学校)での個人情報の扱いについての基本情報と、公立小中学校の法令遵守へむけての筆者の取り組みについて、ルポルタージュ(2014年~現在進行中)を交えて紹介します。
さらに、学校で法令遵守ができない最大の理由...
それは、「PTA」です。
実は、PTAは学校の一部ではありません。個人情報保護の法令の対象外である「任意団体」の一つで、入会も退会も自由です。PTAはその設立の根拠となる法令や設置の義務はなく、任意団体が自らの規約の中でPTAと「自称」しているにすぎません。
行政では、社会教育法での社会教育関係団体として扱われることがほとんどですが(ちなみに社会教育法や学校教育法、地方教育行政法、教育基本法、学校給食法などにはPTAという言葉は一切出てきません)、社会教育法での社会教育関係団体と、実際に皆さんがイメージや活動しているPTAとは大きなギャップがあります。それもそのはず「社会教育」という言葉に相対する語、それは「学校教育」という言葉なのです。
公立小中学校とPTA、この両者の関係は個人情報保護についての暗部であるとともに、日本全国で同様な構造が構築され長年続けられてきました。トータルで見れば個人情報保護法施行後の最大の漏洩案件である(しかも現在進行中)といえます。またこれが、様々な社会問題の解決の妨げにもなっていることが明らかになってきています。
学校の現場では個人情報漏洩が日常的に行われています。この本を手にとった皆さんの中には、ベネッセ社の事件で、「一度流出した個人情報は回収または消去することは事実上できない」ということを実際に経験された方も多いと思います。
個人情報を保護するためには、漏洩する前に手を打つことが必要です。本書はこのための、現状に対するカウンターです。
個人情報漏洩被害に遭わないためにはどうすればよいのか、また学校やPTAはなにをすべきなのか、学校に関わる予定のある方また現在関わっている方はぜひ本書をお読みになり、個人情報保護についての見識を深めていただき、身の回りで活用していただければ幸いです。
2015年5月
神宮寺ぴこ
■目次
はじめに
第1部  学校での個人情報保護について
第1章  結論
1-1  前提と向き不向き
1-2  個人情報漏洩対策方法
1-2-1  やること
1-2-2  時期
1-2-3  表明の内容
1-3  個人情報のコントロールと、個人情報保護の基本的な情報
1-4  結論の結論
第2章  個人情報保護法と個人情報保護条例
2-1  個人情報保護法
2-2  個人情報保護条例
2-3  公立学校の位置づけ
2-4  PTAをはじめとする任意団体は法令対象外
第3章  筆者からのメッセージ
3-1  学校関係者の方へ
3-2  PTA関係者の方へ
第4章 自治体と教育委員会、学校、国の関係性
4-1  全体的な関係
4-2  従来の教育委員会の構成
4-3  ラスボスは教育長
4-4  新しい教育委員会の構成
4-5  文部科学省の影響力はどこまでか
第5章  法令遵守できない最大の理由「PTA」
5-1  学校とPTAの癒着
5-2 PTAは学校とは独立した単なる任意団体の一つ
5-3  社会教育と学校教育
5-4  PTAが学校内で活動できる理由
5-5  学校教育の範囲とは
5-6  学校がPTAと癒着する理由
5-7  類似の事例
第6章  誤認錯誤を誘う様々な罠
6-1  文書の宛先と差出人
6-2  文書配布方法
6-3  文書の内容
6-4  フェアにいきましょう
第2部 ルポルタージュ - 筆者の現場より
第7章  はじまり
7-1  2014年の注目すべき個人情報漏洩事件
7-2  東京都狛江市立小学校での個人情報漏洩事件
7-3  ベネッセ社の個人情報漏洩事件
7-4  大分県教職員組合が主催する懇談会に関する個人情報漏洩事件
7-5  筆者のアクション
第8章  自治体とのメールのやりとり
8-1  最初の問い合わせと回答(2014年7月)
8-2  2回目の問い合わせと回答(2014年8月)
8-3  3回目の問い合わせと回答(2014年9月)
8-4  4回目の問い合わせと回答(2014年9月)
8-5  5回目の問い合わせ(2014年10月)
第9章  入学前検診での学校からの配布物
9-1  配布物
9-2  6回目の問い合わせと回答(2014年10月)
第10章  総務担当課とのやりとり
10-1  学校での個人情報保護について
10-2  どうやって入学予定対象者に連絡をしているのか
10-3  学校は独自に個人情報を収集している
第11章  教育委員会とのやりとり1
11-1  2014年11月 教育委員会会議室にて
11-2  音声記録資料の別途提供について
第12章  学校とのやりとり
12-1  2014年11月 校長室にて
12-2  学校徴収金について
12-3  PTA会費の抱き合わせ徴収
12-4  それは認識不足ですよ
第13章  校長先生との電話
13-1  2014年12月 校長先生との電話にて
13-2  後退
第14章  教育委員会とのやりとり2
14-1  2014年12月 教育委員会会議室にて
14-2  停滞
第15章  教育委員会とのやりとり3
15-1  2015年2月 教育委員会会議室にて
15-2  転換
第16章  PTA会長、校長先生とのやりとり
16-1  2015年2月 校長室にて
16-2  入学説明会での配布予定物について
16-3  モデル校
第17章  入学説明会
17-1  2015年2月 学校体育館にて
17-2  配布物
17-3  PTA会長挨拶
第18章  入学説明会が終わって
18-1  筆者からの手紙
18-2  その後
おわりに