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逃がれの街 (集英社文庫)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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やはり巨匠  ★★★★★
北方謙三は、純文学作家としてデビューした。これは長篇ハードボイルド二作目で、当時話題になったものだが、何が凄いといって、これは解説の北上次郎も書いているのだが、ストーリーの力で読ませるのではないことである。筋の展開にはムリがある。いくら何でもそうなる前に歯止めがかかるだろうと思わせる。一介の市井の男が犯罪を犯して警察に追われるというような小説はいくらもある。その際、ふと知り合った子供を一緒に連れていくというような物語も、さして珍しくはない。なのに凡作になっていないのは、純文学で培った文章の力かもしれない。文章には、一点の疑問も見出せない。格闘シーンなど、まったくムダもなければ不足もない。そして何より、このストーリーで書けると思うところが凄い。北方を学生として教えたという磯田光一に妬みさえ覚える。感服した。
年の離れた二人の友情に涙・・・ ★★★★★
北方謙三といえば、「弔鐘はるかなり」のようなハードボイルド・アクションをイメージする。しかし、本書は違うのである。繰り広げられるドラマに泣ける、「物語」なのである。名作なのである。

近年のクライム・ノヴェルだと、一人の犯罪者が追っ手(警察、殺し屋、ヤクザなど)からやはり一人(もしくは女とかと一緒)で逃げるものが多い(かな?)。だが、「逃れの街」はそうではない。なんと「相棒」は、公園で知り合った見ず知らずの少年だ。
そのほかに、脇役たちが輝いている。内藤陳氏の叫び(「眠りなき夜」解説参照)に納得する次第。
主人公・幸二をジリジリと追いつめてゆく刑事、恋人・牧子、そして前述の少年・ヒロシ。
脇役が輝いているといっても、出しゃばっているわけではない。それぞれがすべきことのみをし、やがてそれはひとつの場所に集結する。
「弔鐘はるかなり」ではあまり見られなかった主人公を刑事たちが追う過程のサスペンスもうまく取り込まれている。
少年と殺しという名の汚れた荷物を背負った若者。ラストでは思わず感動・・・・。いい結末とはいえないのに、読み終えたとき、なぜか心はスッキリしている。まるでいい映画を観終わったあとのように―。

歴史に残る名作だ。
街から逃れるように 男は己の人生の終止符を打った ★★★★★
人を殺した青年と少年の間に芽生えた魂の交流、逃れるように街を去った彼らの行く手には、死の間際に青年の心に何かが灯った、人生をあまりにも生き急いだひとりの男の苛烈で儚き物語、北方謙三氏の名作中の名作です