現代社会の状況を解き明かす確かな文化人類学
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網野良彦が語っていたように私たちの生きている現代は歴史の流れの中で見ると途轍もない社会構造の大変革時代にあるのだろう。特に,継承家族制度の崩壊と性意識の平等化及び女性の社会進出は限りなく日本社会を凄まじい勢いで変えつつあり,日本自体を崩壊させかねないほどになっている。『晩婚化と少子化とは,日本の社会的情況がもたらしたものであると同時に,日本人が,結婚も子どもを産み育てることも,自分を中心に考え,自分の後に残るもの,残すべきものに関心をもたなくなったことを示している。人生は自分のみで終わり,死でもって終了するという自己存在の認識が広がってきている』なんとこの本は1991年に書かれており,波平さんのもつ社会分析の確かさと,これからのあるべき社会を考える上での文化人類学という学問の役割と重要性をよく理解できた。