技法論が欠落している
★★☆☆☆
エロマンガの表現は自然発生するのではなく、先行する作品を真似し、自分の持ち味を付け加える形で、少しずつ進歩してきた。ところが、この本だと、各作家が好き勝手に描いているように書かれている。技術的な系統図を作るでもなく、カテゴリにまとめて、だらだらと解説しているだけなのである★最近の流行としては、膣に挿入したペニスを断面図で描くというものがある。大半の作家がやっているといってよい。この始祖は誰なのかを探すだけでも、十分興味深い研究になるはずなのだが。
現在のエロマンガの手引書
★★★★★
自らの体験でいえばエロ漫画のお世話になったのはアダルトビデオの出現までだったが、それでもダーティー松本が好きで単行本は集めた。結婚して家庭を持つことでそれらの本はダンボールに入れて実家の押入れ深くしまわれてしまったが、最近たまたま書店で雑誌「LO」を立ち読みし、こんな世界があるのかと愕然とした。
町田ひらくの絵を表紙に使ったこの本は誘惑的で、読むと作者の博覧強記ぶりとエロマンガの現在の広がりと深さにびっくりさせられた。しかし町田のサイン会に集まるファンの半数が女性読者だとは世の中変わったもんだ。第一部のエロマンガ全史は後世への影響力から手塚治虫作品の分析から始まっている。医学部出身で医師でもあった手塚が性の微妙な問題を採り上げたのは当然な気もするが、生前のインタビューで鉄腕アトムの実写版を撮影したとき「アトムを女性にやらせたらエッチになっちゃって」と苦笑いしながら告白しているのを記憶しているが、本人も鉄腕アトムのエロチズムには気づいていたと思う。
1980年代前半頃まではついていけたがそれ以降は未知の世界で、90年代前半に宮崎勤の事件を伏線とする大弾圧事件があったとは知らなかった。その後に「萌え」の時代がやってきて今の隆盛期につながる。
第2部は欲望のカタチから7つに分類して作品を紹介しているが、現在の作品を紹介するにはそれだけ分野が広がり内容が深くなったということである。著者は意識的に難解に説明しているようだが、内容の把握はそれほど大事じゃない。ここに挙げられた著者と作品は代表的なものであるから、まず手にとって中身を見ることである。そういう意味ではこの本は現在のエロマンガの手引書であるともいえる。
・・・
★★☆☆☆
楽しめたし、興味深いのだけど・・・なんか文章にやたらむずかしい表現があったり、脚注がやたら多かったりと、かなりに読みづらいです。
例えば「しのざき(嶺)は享楽と乱淫を描きつつ、バタイユ的なタナトスの領域まで接近する。」という表現。
わかります?この表現で?「ああ、なるほど。そうなのか。」と素直に納得することができますか?正直、学の無い私にはいまいちわからなくて、辞書片手に読む羽目になりました。もう少し読みやすくすることも出来たと思うのですが・・・
レビュー描くためにわざわざ難しい所を引用してると思う人もいるかもしれませんが、ハッキリ言って全編にわたりこの調子です。敷居はけっこう高い本です。
今後エロマンガについて書くならこれが最重要参考文献になるはず・・・
★★★★★
マンガ評論家による日本のエロマンガを徹底的に解剖した本。
本書は二部構成になっている。一部は日本のエロマンガの歴史をジャンルと雑誌の変遷からとらえなおす。二部では「ロリコン」、「巨乳」、「妹系」、「近親相姦」などのエロの「ツボ」ごとに解説していく。
数多あるエロマンガを読みまくってきた筆者によれば、読者にとってエロマンガは「エロがあるならノープロブレム」なのだ。一見これは、男が見境のない性欲をもっているということを言っているようだが、そういうことではない。エロマンガはある意味「実用的な」マンガであるから、読者にとっては自分が興奮できるならなんでもよいのだ。80年代初頭に、アニメ絵の美少女エロマンガの時代が到来したのだが、これはアニメ絵のエロマンガが「たまたま」美少女マンガから始まっただけであって、その事実から読者を現実世界において「ロリコン趣味」であると決め付けるのは早計だ。それらは「エロがあるならば」という条件付でエロマンガとして流行っただけなのだ。その証拠に以降、純粋な美少女マンガの愛好者のオタクと、エロマンガ読者は分化していくことになる。
また現実のセクシュアリティとマンガにおけるセクシュアリティははっきりいって「別腹」であるということの発見も、本書の卓見だろう。
これも筆者が何度も繰り返し述べていることだが、
エロマンガにおいて「1度生まれたモード、スタイル、テーマ、モチーフ、趣味志向、傾向は盛衰があっても決してなくならない」ということだ。
現実ではすることができない、鬼畜的なプレイの数々、これでもかというぐらい女を陵辱する作品はもはやスプラッターモノであり、もはやほとんどの人間にとってはズリネタにならない。
しかしそれらも零細ながらも「需要」があるということは、「実用」している読者がいる可能性があるということだ。あらためて人類の性欲の歪さに感心してしまうばかりである。
力の入った一冊
★★★★☆
非常に力の入った一冊。
サブカルがメジャーになって以来(サブなのにメジャーってのは矛盾するようでもあるが)、エロを含む様々なジャンルが陽のあたるところで語られてきたが、「エロマンガ」に特化した研究はこれまでなかった(と思う)。
自身のエロマンガに関する知識および経験の範囲を大幅に超えているため(特に90年代以降)、流れを追うだけで一杯一杯であるが、本作で取り上げられている作品群をいつかはチェックしてみたい気にさせられる。
余談ですが、エロトピアって2000年に休刊したことを知りました。(道理で最近見かけないと思った。)