コンテンツ業界を横断的に見ることで、業界全体の底を流れる潮流が理解できる
★★★☆☆
「アナログからデジタルへ、そしてWeb2.0へ」というトレンドを反映したコンテンツ業界全体の底を流れる潮流が上手に整理されている。 本書を読むことで各業界の基礎とトレンドが理解できる上、一つの業界で起こっていることが他の業界に示唆することにも気付くことができる。何か目新しい最先端の情報が得られるという本ではないが、これまで伝統的に区切られていた業界を横断的に整理することで、それら業界の根底に流れるダイナミズムを理解できる。
まず、最初の2章を費やしてコンテンツ・ビジネスの構造・本質を概説。ここで(1)人材の育成、(2)コンテンツの企画・制作、(3)コンテンツの流通・配信、(4)課金、そして(5)そのマネタイズを守る法的制度がコンテンツ・ビジネスをビジネスとして成立させる要素として整理されている。また、当ビジネスを形成するバリューチェーンが、(1)コンテンツの作成、(2)マネタイズするための機能(著作権保護、課金・決済、顧客情報管理、認証・セキュリティ等)、そして(3)流通機能という風に整理されている。
後半の各章で各業界の基礎知識と最近の潮流が説明されていくのだが(第3〜7章)、上記のように前半でコンテンツ業界全般を大掴みするためのフレームワークがきっちりと説明されていることで、各章での説明がすんなりと頭の中で整理されていく。
業界ごとに差異はあれども、「アナログからデジタルへ、そしてWeb2.0へ」という流れを受けて、(1)各業界のバリューチェーンがアンバンドリングされると共に、(2)バリューチェーンの両端(コンテンツのクリエーターと流通チャネル)が多様化していくことが見てとれた。 と同時に、テレビ番組がインターネットでなかなか配信されない等の問題の根底には、大変難しい権利関係という業界の構造的な要因がボトルネックになっているという課題もよく理解できた。