社会福祉学の到達点
★★★☆☆
社会福祉、といえば、従来、貧困(生活保護)、施設入所、障害、というイメージをもたれがちだが、現代はすべての人がウェルビーングの状態を高めることに寄与するため、ソーシャルワークは人間の行動と社会システムに関する理論を活用して、人々と環境との接点に介入する総合的な実践だ、という社会福祉学の最近の到達点が本書では強調されている。
社会福祉サービスの決定は、行政処分により、対象者、提供するサービスの種類や範囲が決定される「措置方式」が長く続いてきたが、2000年以降「社会福祉構造改革」によってそれが変わった。利用者と事業者の契約が基本となるサービス利用において、いよいよソーシャルワークは真価を発揮する、と著者は述べ、今日、「福祉国家」体制が揺らぎ、ソーシャルワークは一国だけで完結するものではないので、フランス市民革命時に発揮された「博愛」の精神(“公の救済は社会の神聖な責務の一つである”という考え方)を思い出して、地球規模のヒューマンセキュリティーを打ち立てていこう、という著者の呼びかけで、本書は締めくくられている。