デンマークのエネルギー政策の取り組みの背景が非常によく分かる
★★★★★
我が国において、数多出版されているデンマーク本は玉石混交というか石だらけの印象が強いが、この本は玉であった。デンマーク人の著者の翻訳書であることがその大きな理由であると思われるが、デンマークのエネルギー政策の取り組みの背景が非常によく分かる。その他のデンマーク本を読む前に、まずこれを読むべきであろう。デンマークがなぜ、エネルギー問題に関して我が国が学ぶ点を有しているかが理解できる。決して、デンマークのよい点だけでなく、悪い点も含めて包括的に分析しているので、客観的に状況を理解できる。日本人の著書が書く、「駄目な日本人はデンマークの爪の垢を煎じて飲んでいろ」といった視座がないのが何しろ助かるし、勉強になる。また、翻訳書ではあるが飯田哲也氏の訳が上手く、非常に抵抗なく読める。これは有り難い。デンマークの分析を通じて、大量生産・大量消費型、GNP至上主義といった現代社会が抱えている本質的な問題が見えてくる。良書である。一点、気になるのは三刷目であるにも関わらず、誤植があること。速読に近いスピードで読んだが3点見つけた。著者そして出版社は刷り上がりを読んでいないのか。そうだとしたら不誠実の誹りは免れないであろう。これが唯一の気になる点で、この問題があるがそれでも本書は5☆評価に値すると考えられる。