仏教の大意
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(序 より)
この書は昭和二十一年四月二十三日と二十四日の両日にわたって、天皇皇后両陛下のために講演したものを基礎にして起稿したものである。講演そのものは、時間の関係上、もとよりこれよりも少量であった。後から原稿を読み直してみて、これではどうも不足だという 気がした。いよいよ公刊するとすれば一般読者のためをも計らなくなくてはならぬ。増補した所以である。
講演申し上げて後まもなく、英国で仏教雑誌「中道」 THE MIDDLE WAY を出版しているクリスマス・ハンプレーズ氏がその英訳を求めた。それで自分の口訳を同氏が筆記して一通りの英訳ができた。同氏はそれを本国に持ち帰り、すでに出版したらしいが、まだ日本へはわたらぬ。ところがこの英訳であるが、今読んでみるとすこぶる意にかなわぬ。それでこの書をもとにして全く別個の英訳を試みた。完成したので、一本は彼の地へ送って再版をしてもらうつもりである。日本ではまた別に出版する。
今、四、五年寿命があると、なお少し精出してまとまった仏教原論というようなものを英文で書きたいと思うが、どうなることか知らん。足りない考えではあるが、こうして書いておけば、跡を継ぐ人も出ることと信ずるのである。仏教は日本だけに蟄息していなければならぬものでない。世界思想に大いに貢献すべきであろう。
昭和二十二年春
鎌倉也風流庵
鈴木大拙
もくじ
序
第一講 大智
第二講 大悲
解説 ― 星飛雄馬