野心も欲も持たず、ただ善良で平凡な小市民として暮らしてきた両親。そんな親に対して、人並みの愛情は持ちながらも、ときどき激しい苛立ちを感じずにいられない大学生の息子。「欲が無いといえば聞こえはいいけど、やる気が無いとも言えるんじゃないか」「こいつらの老後はオレの肩にかかってる。そのこと分かってんのかな」
いい人たちだけど無知で世間知らずで、抜け目の無い計算や人生設計なんかまったく出来ない親。そんなちっぽけな父さんと母さんがあっけなく死んだ。
残された2匹の金魚を連れて海へ向かう息子が、黄昏のなかで出会う両親の幻。彼らの愛情を込めたプレゼントを、それはあまりに非常識なものではあったけれど、一度くらい喜んで見せてやればよかった。遠ざかる二人の姿に、息子が心の中で詫びる場面が印象的です。
生きている親に対する苛立ち、理解とあきらめ、死んでしまった親に対する切ない気持が、幻想的な絵でキレイに描かれています。