民藝に息づくすこやかな魅力
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手仕事の大切さを感じる民藝。郷土に息づく品々の「すこやかな美」に静かなる感動を覚える。「民藝」この言葉の生みの親は柳宋悦(1889〜1961)その人。死後半世紀が来ようとしている。白樺派に属し、志賀直哉、武者小路実篤に通じる宗教哲学がある人だと言えば、ほぼ推察できよう。雑器に寄せるまなざしにも温かく深いものがある。東京・駒場の「日本民藝館」に一万七千点に及ぶ。「てらいが無いから美しい」「名も無い職人の手仕事」を愛した。貴族的工藝美術に対する「民衆的工藝=民藝」なのだ。それはまた「無心が生み出す器の美」無欲な心が器になったものだった。
人々の暮らしを支え、各地の風土が生み出した「すこやかな美」には「自然の意志」を感じることができる。「風土と知恵が道具を作る」家具調度品には「用の美」が宿る。ものは用いられるから美しい。単なる飾り物でない。使い手になじむものの形は自ずと美しさを醸し出す。美の求道者、柳宋悦。その生涯と仕事がここに集約され、凝縮美が示されている。
人と自然との調和の接点に「民藝」のそこはかとない魅力がある。