その話を聞かせてはいけない (Kindle Single)
価格: ¥0
中国人の少年が幻想の先に見たのは、中国伝統の「鬼」(グゥェイ)なのか、日本の幽霊なのか? 桃源郷からかけ離れた孤独な日常に魔が忍び寄る、ホラータッチの中編。
馬珂(マー・カー)は4年前、5歳の時、中国・湖北省から来日し、小さな町で暮らしている。両親は一階で中華料理店を経営し、二階が住居だ。店に来るお客さんはずいぶん減ったのに、仕事が忙しいと言って、両親はかまってくれず、一人っ子の珂はいつも一人ぼっちだ。そう、友達もいない。保育園のとき、名前を「バカ」とからかわれて以来、小学校にあがっても、誰も珂を相手にしようとしない。
珂の脳裏には、故郷に残してきた祖父が語って聞かせた妖怪たちが、怖さと懐かしさを伴ってたちのぼっては、消えていく。でも大丈夫、祖父は妖怪を追い払うおまじないを教えてくれたし、母から借りた毛糸の帽子の赤には魔除けの効果もある。ところが……。
追い詰められた少年の心理に肉薄する逸品。