後世に残すべき美人画を描いた挿絵画家です
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結構いろいろな美術作品に触れてきたと思っていたのですが、岩田専太郎という一世を風靡したと言われる挿絵画家のことを本書で初めて知りました。
時代と共に様々なタイプの美人画を6万枚も描いたと言われています。それだけでも驚異的ですが、その絵が現在の感覚で眺めてもとても魅力的なのが素晴らしいと思いました。
司馬遼太郎、下母澤寛、池波正太郎、笹沢佐保、松本清張、平岩弓枝、川口松太郎、横溝正史、吉行淳之介、吉川英治、大佛次郎、三島由紀夫等、その時代を代表する小説家の作品にずっと関わってきた岩田専太郎ですので、実際は多くの方の目に触れているはずですが、「挿絵」ということで一般の絵画からは低く評価されているのが気の毒です。
伊東深水系の現代美人を手がける画家として高く評価したいと思います。時代の流行を敏感にとらえ、次から次へと作風が変化していくさまを眺めますと、器用ですし、技術も卓越していますね。
その時代にはもてはやされても時代の流れと共に忘れさられていく挿絵画家にスポットライトをあてて再び世に問う本書の存在は貴重だと感じました。