良い点
断片的でなく筋の通った物語
情交の描画のリアリティ
世界観
においのある描写の数々

悪い点
表紙絵が白亜だとするならとてもがっかりなレベル
時々思考が途切れたかのような文体

正直、日記を読んでるような気分だった。推敲したのかというほどの文章を感じるところが多々。そいうした未熟さを含めた作品だと思い込みでもしない限り、納得できない出来。

ただ、物語は面白い。もっと読ませる書き方なら高評価をつけられる。つまり、惜しい作品。

いわゆる‘幻想的’でした。とろんとした空気感が心地良く。

それにしても、巷のご感想、やはり意見が割れてますね。
そんな所も面白い。表紙絵、結構気に入ったけどな。

個人的にはスケキヨの指、見てみたいー、などと（あ

新人の小説は殆んど読まないのだが、千早茜の「魚神（いおがみ）」が、小説スバル新人賞、その後泉鏡花文学賞のダブル受賞で、全選考委員を唸らせ、ほぼ満場一致で決まったというので読んでみた。長編の処女作が受賞というわけだ。

幻想小説とあるが、全て訳の分からぬ晦渋な言い回しではなく、描写は幻想的だが人物の筋書きは分かり易く読み進められ、決して難解ではない。

島の遊郭で捨て子の少年スケキヨと少女白亜の姉弟が、老婆に育てられ売られてゆくのだが、宮尾登美子の「岩伍覚え書」など、一連の今は無き花柳界を描いたものを読んだ後だけに、同じ境遇で何の力も無い子供達の、翻弄され続ける人生に引き込まれてしまう。

ただ作者は作中出てくる蓮沼という男は、途中から思いついて書き加えたそうだが、これは無かったほうが良かった気がする。

退廃的な遊郭内の話なのに、読み終わってすがすがしいのは、スケキヨと白亜の清く真直ぐな気持ちが伝わったせいだろう。性や死さえもが美しく感じられた。若い新人でこれだけ書けたので、今後を期待したい

これほどスケールの大きな話を書ける女性作家は珍しいのではないでしょうか。文章にもきらめく才能がほとばしっている。しかもそれを抑えた筆で書いているのはすごい。物語りも構成がよく練られていて新人とは思えない出来映えだ。
注目の大型新人であることは間違いがない。

日和 聡子さんの 'おのごろじま' は純シュールレアリスムの作品で，それ故に難解だった．この新人のデビュー作は，話の筋が見えるので，単なるファンタジーに見えるかも知れないが，やはりれっきとしたシュールレアリスムの作品で，とにかく美しいイメージが印象的である．時代も場所も分らず，主人公達は性だけが違う一卵性双生児ではあるまいか．このような途方もない設定は普通のファンタジーでは無理でしょう．まず男の子が陰間として売られる．やがて女の子は将来の遊女として廓に売られる．物語はこの姉弟の間の愛と主題とし，逃げ出した男の子による廓の遊女の救出と駆け落ちが描かれるが，その間，売春，殺人，放火虐殺，自殺未遂などなど，余り美しいとは限らない描写があるだけに，正面から描かれる美の描写が効果的なのだ．こんなにひたすらに美しい物語は珍しいだろう．強く推薦．ただし，カバーの絵は品がなく，この物語の耽美性を裏切っているのが残念．