姉妹編『精神症候学』を超える面白さ
★★★★★
本書の序によると,『精神症候学』で紹介した数々の用語をどのように使い分けて病歴・病像を組み立てればよいか,症例を提示した応用編の執筆を求められ,そうした要望に応えたのがこの本だそうです。
個人的には,『精神症候学』より面白く読めました。引用された文献は420。提示された症例は115。各々の症例が示す精神症状すべてが精神症候学用語によって細密に記述し尽くされ,著者がこの分野に通暁していることがありありと伝わってきます。三島由紀夫,シェイクスピア,ホーソーンなどの文学作品からの引用も豊富で,小説好きにはたまりません。
巻末に,索引や文献と並んで症例一覧が設けてあり,そうしたひと手間がかけられていることからも,本書が精魂こめて作られたものだと分かります。