坂本龍馬といえば、幕末維新期の永遠のヒーローとして不動の地位にあり、その生涯を描いた司馬遼太郎の『竜馬がゆく』もまた、国民小説といっていいほどの評価を得ている。
だが、そんな司馬「龍馬」の存在ゆえか、後続する「龍馬小説」がなべて小粒に見られがちなのも事実である。この壁に、歴史小説家としてすでに第一人者である津本陽が挑んだ。それが本書から始まる全5巻のこのシリーズなのだ。
第1巻・青雲編では、いまだ何者でもない若き龍馬が、江戸への武者修行、黒船襲来などの未知の体験や、多くの人との交流を通じて、自分のなすべきことを探し続ける姿が描かれている。確かに彼は剣術に秀いでており、時代の空気の流れに敏感な若者ではあるものの、そのキャンバスは無地のままなのだ。
加えてこの巻では、恋人お琴との、慎み深くも一途なラブストーリーが横軸に展開されている。さらには、いつも龍馬の傍らにいて、彼を見守り励ます姉乙女。幕末という、ともすれば男臭さだけがにおい立ってくる時代に、優しく涼やかな風が吹いている。作中、海のシーンが多いのも、物語の風通しをよくしている。海は、龍馬にとって、土佐や身分という狭い世界・関係を越えることのできる唯一自由の象徴なのである。
困ったのは、読み終わったあと、龍馬たちが使う土佐弁が頭から離れないことだ。津本の憎いテクニックが効いている。(文月 達)
お勧めできない一冊
★☆☆☆☆
江戸への遊学や黒船の来航の場面を描いた第1作目でした。竜馬が親友の妹お琴を好きだったとうのが新鮮でした。竜馬の生き方を描くというより、周りの人や時代背景をかなり描いていて、横道にそれ過ぎではないかという印象がある。竜馬の魅力が引き出されていないと感じました。読む時間が避けなかったのもあるが、1冊読むのに時間がかかりすぎてしまった。
初心者向けではないかも
★★★☆☆
司馬遼太郎の「竜馬」に夢中になり、竜馬が好きになりました。そして「別の人が竜馬を書いたらどのようになるのだろう?」と言う思いからこの本を手にしたのですが、方言と古語、昔の単位を多様し過ぎている為、私のような時代小説素人には読みにくい気がします。
内容的にも盛り上がるのは2巻目以降なんだと思います。
”志”は時代を動かす
★★★★★
人の価値を決めるのは”志”の所在だ。
普段、大きな事をいうが実行力に欠ける人がいる。
失礼ながら、言葉ほどに”志”は高くない人なのだろう。
坂本龍馬は、大きな”志”の中で生き死んでいった。
その”志”がいかにして養成されたのかの鍵がこの巻にある。
多くの人達と会い、そこから多くを学んでいく。
万次郎・武市半平太・岡田以蔵・佐久間象山・・・・
現代もそんな時代なのではないだろうか。
未来の坂本龍馬達に読んで頂きたい本です。
新しい龍馬と幕末史観
★★★☆☆
この本を読む人は司馬遼太郎の「竜馬が行く」とどうしても比べてしまう人が多いのではないだろうか。司馬竜馬に比べると津本龍馬は、高知弁や手紙の引用が多く、より史実に近いのではないか、という印象を受ける。
特に印象に残るのは、龍馬が実際に殺生をする場面。あれだけの荒れた時代に、本書で描かれた龍馬による殺生シーンは3度だけ、とはいえ司馬竜馬の中では明示されてない部分である。中でも、寺田屋で幕吏に襲われたときの正当防衛による殺傷が、最後の暗殺の伏線としてずっと影を落としている。ただ、全体的には陽性でダイナミックな龍馬の魅力は存分に描かれており、龍馬ファンならずとも一読に値する小説だと言える。
坂本龍馬ファン待望の本!
★★★★★
司馬遼太郎による「竜馬」は、日本が生んだ英雄として今まで君臨してきた。それを読んだ多くの人々が共感を受け、それぞれの心の中に生き続けていると思います。そしてその小説「竜馬」から「龍馬」へ。この将来の見通しに不安が広がっている今の日本に、また新たな英雄像が求められているのではないでしょうか。自分の将来をどう生きるか悩み、そして日本のために生きていこうと決心する龍馬が、また新しい形で生まれたことが大変うれしいです。