ぶたぶたさん、お久しぶりっ!
★★★★☆
外見は、バレーボール大のぶたのぬいぐるみ。色は、桜色。黒ビーズの点目に、突き出た鼻、右の耳がそっくり返っている。かわいらしいことこの上もないんだけれど、声はおっさんで、性格は心優しき中年という取り合わせが絶妙なんだろうなあ。山崎ぶたぶたさんの一挙手一投足に目をまん丸くし、唖然とする人たちの様子を見ているだけで、癒やされるシリーズです。
最新刊の本書には、次の五つの書下ろし短篇が収められています。
小学校の先生になった男が、十年ぶりにぶたぶたと会う・・・・・・「再会の夏」。
ホラー作家が、ぶたぶたを主人公にしたホラー小説を書く・・・・・・「隣の女」。
ぶたぶたが警官として、立てこもり犯と接触する・・・・・・「次の日」。
ぶたぶたの、小学校一年生の下の娘が活躍する・・・・・・「小さなストーカー」。
おばあちゃんとぶたぶたとの一週間の同居生活を描いた・・・・・・「桜色七日」。
なかでも、おばあちゃんが作る玉子チャーハンが美味しそうで、ぶたぶたさんと一緒に食べたくなった「桜色七日」。ホラー短篇の作中作に、中島らもの逸品というべき「耳飢え」(『人体模型の夜 (集英社文庫)』所収)を思い出した「隣の女」。この二篇が、特に面白かったですね。
久しぶりに本文庫で、山崎ぶたぶたさんが周りの人たちを癒やす話を読みながら、彼のモデルになったろう、桜色のぶたのぬいぐるみを思い浮かべました。それは、とあるオフ会で、作者の矢崎在美(やざき ありみ)さんを囲んでの話に花が咲いたときのこと。椅子にちんまりと腰掛けて、鼻をもくもく動かしていた(ような、あれは気のせい?)ぶたぶたさんの、いや、かわいかったこと! 今でも忘れられません。